うつ病
うつ病
近年増加している精神疾患(主にうつ病)は、診断まで意外と気づかなかったり、ほおってしまうケースもありますが、早期治療、早期発見が重要であり、また家族や職場がバックアップも必要になります。病院での治療に併用して鍼灸治療を行うことで日常生活を送りやすくする手助けになると思います。ここでは「うつ病」に関しての記載してありますが、他の精神疾患も来院される方もおります。(ex:不安神経症、パニック障害、心身症)
うつ病の特徴
気分が沈んだり、やる気が起きない。あるいは心が不安定な1日を過ごすということは誰しもあります。しかし時間と共に落ち込んだ
気分から回復して、また元気に「がんばろう」と思える様になります。
ところが、気分が沈んだままで、いつまでたっても回復しないことがあります。このような状態を「うつ状態」といい、これが2週間以上も続くような場合は、うつ病かもしれません。
うつ病の分類
うつ病にはアメリカ精神医学会の分類と古典的分類(ドイツ精神医学)に分けられます。
アメリカ精神医学会では
「大うつ病」 「気分変調症」
古典的分類(ドイツ精神医学)では
「(心理的誘因の明らかな)心因性うつ病」 「(心理的誘因の明らかでない)内因性うつ病」
※心理的誘因とは簡単に言うと原因となる精神的ストレスのことです
また、長期に渡るうつ病の経過(変化)によって以下のように分けられることもあります。
「双極性障害(躁うつ病)」
「反復うつ病」
「単一エピソードうつ病」
うつ病(うつ状態)の主な症状は精神症状と身体症状に分けられます。
※ただし上記のような長期的な疾患は針灸治療を併用しても変化が現れるのに
時間がかかる場合がありますし、効果を感じにくい場合もございます。
精神症状
「抑うつ気分」:気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分と言った
「興味・喜びの喪失」:以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず感情が麻痺した状態
身体症状
不眠症などの睡眠障害。
消化器系の疾患、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加。
全身の様々な部位のだるさ・痛み(腰痛、頭痛など)があります。
精神症状はセロトニン等の脳内物質の異常によって起こると考えられており、そのためうつ病の治療は薬物治療が主流です。
一方身体症状は主に自律神経の異常による様々な症状が出るので、うつ病の治療としてはあまり行われません。
ですので、薬物治療と並行して鍼灸治療により身体症状を緩和していくことが症状の緩和につながる可能性があります。
鍼灸治療
東洋医学的所見
鍼灸で治療を行う利点は薬と違い副作用がないことです。もちろん薬での治療は必要です。むしろ薬での副作用による症状を緩和することも効果として期待できます。また身体症状の緩和が精神的な余裕を生む、体が楽になる=心も楽になる。
これは古くから中国医学でいう「心身一如」の考えです。
五蔵の働きを考えると、 主に脾虚が絡んできます。
五志(五行論の感情所属)で脾は「思」です。思慮は脾を傷め、脾が痛むと思慮深くなる。
考えれば考える程、脾と表裏の胃の状態が悪くなる。
これは脾虚胃虚熱証となる。
胃虚熱が進むと肝実熱となり、熱がなくなり肝実瘀血証に進んでいく。
肝実証は気のうっ滞がある状態(気の滞り)です。気が巡らないため、活動的になれないのです。
使用するツボ
腕のツボ:大陵、太白
頭のツボ:百会、印堂、
腹部のツボ:中脘、不容、幽門、関元など
足のツボ:足三里、足臨泣など
上記のうつ病によく使うツボを使います。その他に疲れやすい・食欲異常・イライラする・落ち込むなどの自律神経症状や眠れないなどの不眠症も鍼灸によって緩和がみられる傾向にあります。
鍼灸治療により身体症状を緩和することで、精神的負担を減ると考えられます。
症例
30代 男性
主訴:精神的不安感、体の重だるさ
経過:不安感の他に、身体症状は寒気、嘔気、動悸、睡眠障害があった。症状には調子の波があり、来院される約1年前から徐々に症状が現れ、薬以外で自身で出来ることは試したいとの理由で来院された。週2回の治療のペースのなかでも調子の波はあったが、3ヵ月過ぎる頃には精神面では落ち着き、身体症状も強く出ない傾向に、週1~10日に1回程のケアを行い、半年後には治療終了した。
しっかり自身の体と向き合った結果、ゆっくり好転した症例です。